記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年5月9日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
英紙FT「安倍政権は愚かで場当たり的な財政目標を無視せよ!」
「アベノミクスは失敗したという批判は間違っている」
英国の経済紙、フィナンシャルタイムズが、
「静かな、しかし実質的なアベノミクスの成功」
The quiet but substantial successes of Abenomics
と題したコラムを配信しています(2017年5月1日付け)
※https://www.ft.com/content/62cc7d40-2e65-11e7-9555-23ef563ecf9a
拝読して驚いたのですが、筆者が、今、強く主張している「プライマリーバランス亡国論」と「全く同じ」議論を、フィナンシャルタイムズが主張しています。
このコラムではまず、「アベノミクスが始められて4年もたつのに、物価上昇率は日銀の目標に届いていない。アベノミクスは失敗したのだ」という批判がしばしば見られることを指摘。
しかし、その批判は、全く間違っている、と批判します。
そもそも、2013年にアベノミクスが始められましたが、それ以後名目成長率は確実に改善しています(平均成長率は、13年以後2.08%ですが、それ以前の12年間は-0.33%でした。実に、2.43%も向上しています)。
マーケットでも、この「デフレ完全脱却」に伴って必然的に発生する「人手不足」問題に対応するために、「過剰サービスの供給」を取りやめる、という形での「実際上な価格の上昇」(※)を図っています(reducing their lavish service standards rather than raising prices)。
(※ここで「実際上の」と記しているのは、今の多くの企業の戦略では、消費者が払う「値段」そのものは変わらないからです。今企業は物価を直接上げるかわりに、過剰サービスを取りやめることで、「特定の質の財・サービスの価格」の引き上げを行っているのです。例えば、100円のポテトチップ1袋を、かつては100gで販売していたのを、90gで販売するようになった、ということです。)
例えば、多くのレストランは24時間営業を取りやめています(scrapping 24-hour opening)。ヤマト運輸は、取扱量を、自身の供給能力で対応可能な範囲まで縮減させようとしています(cut volumes to a level its network can handle)。つまり、経営者たちがいま頭を使い、労力を投入しているのは、「コストカット」でなく、「人材確保」なのです(Rather than cutting costs, chief executives spend their time working out how to hire and retain staff)。
こうした「人材確保」のための「過剰サービスの縮小」の各企業の努力は、必然的に、実際上の「賃金上昇」と「物価上昇」をもたらします。したがってそれは早晩、「消費拡大」を促し「投資拡大」を促進します。つまりこの流れは間違いなく、「経済の好循環」の到来の契機となっているのです。
つまり、いま日本では、マクロレベルでのGDP成長率の上昇と、ミクロレベルでの「過剰サービスの縮小=実際上の物価上昇」が起こり始めているのです!
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