記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年4月25日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
「国の借金」の嘘。財政健全化で貧困と格差はむしろ拡大していく
亡国への道を歩む日本
この度、『プライマリー・バランス亡国論』という書籍を、出版することとなりました。
今、日本が採用している「プライマリー・バランス(基礎的財政収支)」の「制約」がある限り、この国は確実に亡国の憂き目にあう――それがこの本の主張ですが、なぜそう主張できるのか、について、その「7つの理由」をご紹介したいと思います。
(1)PB制約のせいで「デフレ」が続く(そして貧困・格差社会が拡大する)
第一に、このプライマリー・バランス制約(以下、PB制約)がある限り、デフレは脱却できません。
そもそもこのPB制約とは要するに、「政府は、税収の範囲で、支出しましょう」というもの。
ですから、デフレで税収が少ない時代――には、支出がどんどん削られていきます。
ですが、デフレというのはそもそも「内需(消費や投資)が冷えこんでしまう現象」で、それを脱却するには「内需を拡大していくこと」が必要不可欠――なのに、政府の支出を削っていけば、デフレから脱却できるはずはない、ということです。
つまり、今日のデフレの最大の原因は、「PB制約にあり」というわけです。
結果、PB制約のせいで、国民は貧困に苛まれ、格差社会が広がっていく――というわけです。
(2)財政が悪化する
「PB制約」は財政健全化のために必要だ、と信じられています。
影響力のある実に多くの経済学者、エコノミスト、政治家、官僚の皆さんが、この説を信じています。というよりも彼らは、PB制約を守ること、イコール、財政再建だ、と考えている節すらあります。
しかし、これは完全な間違い。
そもそも、財政悪化の原因は、「デフレ」です。
日本は98年にデフレ化するのですが、その前後で、国債発行額はナント3倍近くに跳ね上がり、20兆円近くも増えています(10年平均が13.1兆円→32.4兆円)。デフレになれば、あらゆる経済活動が停滞し、税収が激減するからです。
これが日本の「財政悪化」をもたらしています。
そして、「PB制約」はデフレを導きますから、「PB制約が財政悪化を導いている」という次第です。
それは、商売人がケチケチ(=PB改善)すれば、「目先の倹約」はできても、お客さんをどんどん失って、結局「貧乏」になる――という、至って当たり前の普通の話なのです。