日本郵政の巨額減損で忘れてはならないのは、成長力に乏しい同社が上場に向けてのお化粧に使ったのが、この豪物流会社トール・ホールディングスの買収だったという事実だ。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
投資家よ怒れ!日本郵政と東芝に共通する「会計づくりのDNA」
日本郵政、数千億円規模の減損処理へ
日本郵政が、業績が低迷しているオーストラリアの物流子会社を巡り、数千億円規模の減損処理を検討していることが20日、分かった。早ければ2017年3月期決算で処理する方向。年内にも政府が日本郵政の株式を売り出す計画があり、日本郵政は損失を出し切って構造改革の意思を示して市場に理解を求めたい考えだ。
この問題は、東芝に「会計づくりのDNA」を植え付けたのは誰だったのか。これを明らかにする出来事だともいえる。
2015年11月に上場した日本郵政。成長力の乏しい日本郵便が上場に向けてのお化粧に使ったのが、上場半年前に行ったオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスの買収だった。この買収を推し進めたのが元東芝の会長、社長であった西室泰三氏。
こうした邪な買収が成功するわけはなく、日本郵政はたった2年で4000億円近い巨額の減損処理を迫られることになった。
上場を控えた2年前にはトール・ホールディングスの買収を成長力嵩上げに利用した日本郵政。今回は年内の株式売り出しを控えて、構造改革の意思を示す道具としてトール・ホールディングスを利用しようとしている。
これは厚かましいを通り越す愚行で、投資家を馬鹿にするもの。
2013年から3年間元東芝社長であった西室泰三氏が経営に当たっていた時代に、日本郵政には「会計づくりのDNA」が植え付けられてしまったのだろうか。
悲しいことは、西室泰三氏が母校の大先輩であるということだ。
『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2017年4月21日)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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