フランス大統領選挙でドル/円相場と日本株はどう動く?
先の米国によるシリア攻撃の時に円が買われたが、ブレグジットでも、欧州債務危機でも、リーマンショックでも円が買われた。仮にル・ペン候補が当選し、フレグジットとなっても円が買われ、円高を嫌気して日本株が売られるのだろうか?
昔は、有事と言えばドル買い、あるいはスイス買いだったが、過去20年ほどは、有事になればドル円が売られるようになった。有事のドル売り・円買いだ。シリア攻撃の時は、円が上昇率のトップだった。どうして、有事に円が世界で一番買われるのだろうか?
日本は経済の規模こそ世界で有数だが、国民1人当たりの規模や成長率では、並みの国でしかない。政府債務のGDP比ではダントツで世界一。株式のパフォーマンスも目立って悪い。日本国債の市場はほぼ機能不全だ。
このうち、世界一は政府債務のGDP比だが、これはベストではなく、ワーストなので、有事の際に安全通貨となる理由とはなりえない。
実は、日本が世界一であるのは他にもある。世界で最も長く超低金利を続けている国であり、世界一対外純資産を持っている国なのだ。つまり、日本国内の運用先が乏しいために、外国資産での運用を大規模に行っている。
有事とは、それが深刻であればあるほど、リスク回避が起きる。つまり、持っているものを売り、現金に換える行動につながるのだ。円買いが起きるのは、外国人が持っている円資産より、日本人が持っている外貨資産の方が大きいからだ。日本人が有事により外貨資産を売らなくても、通貨ヘッジでも円が買われる。金利差を利用してのキャリートレードのアンワインドでも、円買いが起きる。
もっとも、日本そのものが有事となり、外国人が本格的に円資産を売る一方で、日本人も外貨に逃避すると、その際はドル高円安となる。その意味では、有事の円買いが起きている間は、まだ日本は平和だということだ。
リスク回避が円高に繋がりやすいという構図を勘案すれば、フランス大統領にル・ペン候補がなれば、一時的に円高に振れる可能性がある。マクロン候補なら、いわゆるノーイベントかもしれない。マクロン候補の勝利は現状維持を意味するので、じり貧状態が続くことを意味するからだ。
とはいえ、これはあくまで短期の話。どちらが勝っても、ドイツやイタリア、他のユーロ圏の国々の火種が消えるわけではない。
円は実需や日米金利差、他のリスク要因で、より大きく動く。従って、一時的な振れを除いては、フランス大統領選を神経質に捉える必要はないと見る。仮に円高が続くようなら、日本株はGPIFや当局の支え無しには厳しいと言えるだろう。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年4月20日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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