消費者物価指数の下落が意味すること/注視すべきその他の国内指標
さらに消費者物価指数です。ここは本当に右肩下がりで、いわゆる持ち合い状態が続いている状況です。これもなかなか伸びてくれないという状況になっています。東京都区部に関してはマイナスになっています。物価が上がらない方がいいという人の方がたくさんいるので物価が上がってこないのだと思いますが、上がってきてほしいところです。
さらに、メインの3業態を中心に小売の販売額を見ていきましょう。百貨店が98.8から98.2です。スーパーが98.9から96.9に下がっています。コンビ二も100.1から98.3に下がってきています。2月は一気に下向きに変わっている状況です。
ポイントとしては、株価が上昇して景況感や業績等の実態がついて株価が上がってくるなかで、金利が追いかけて上昇するケースについてはほとんど心配がいらないということなのです。好景気を持続させるため、過熱感を持たせないための利上げだからです。
2月は春節だとかお休みがありましたから、数値が上がってきてもおかしくないと思います。もちろん観光客も好調の今、休み以外でもいろいろな方が来られている部分もあるとは思いますが、それでもやはり伸びが鈍化しているという厳しい状況です。ですから、こういう落ち込みからしますと、小売店株への投資という観点で考えた場合に、小売業の、特にこの3業態はなかなか投資しづらいという状況に残念ながらなってしまいます。
次にマネーストックを見ていきましょう。これまでのところは株価が上昇する過程で流動性が上昇して、なおかつ残高も増えるという状況で、株価の上昇、あるいは下支えというのは連動していました。ところがここにきて、2月までの数字にはなりますが、マネーストックが伸びているにも関わらず、なかなか株価が上げきらないという状況です。
2月の株価は横ばいで推移していましたから、これから出てくる3月のマネーストックが低下しているということになると、3月の株価は上値が重たくて下旬にかけて下落したという裏づけになる可能性もあります。そういう意味では、こういった資金の流れもしっかりと見ておく必要があるわけです。
特に流動性が低下するというようなことになると、3月の期末要因ということも考えられますが、それよりも資金、市場に流れてくるお金がちょっと減っているというように考えざるを得ない状況です。マネーストック辺りは右肩上がりが続いているかどうかは、確認しておきたいところです。
日米長期金利の動きに注意
そして金利です。日銀がマイナス金利を導入したところから金利がマイナスの状況が続いていましたが、イールドカーブコントロールを導入してから、少しずつ金利が戻ってきており、プラス圏で推移しています。ただ、イールドカーブコントロールを導入して0近辺に金利を抑えるということから、さすがにマイナスにはならなくなっているものの、ほとんど上がってきていない状況です。10年預けても0.1%という水準にも届かない状況が続いているということです。
当初はマイナス金利によって不動産、REITなどが融資を受けやすくなるということから不動産REITが上昇したりしていましたが、最近ではマイナス金利からプラス圏に戻ったところで横ばいです。物件のあるなしも関係しているとは思いますが、REIT指数についても上値が重たくなってきています。
0.1になったからといって金利負担が大きく増えるわけではありませんが、低金利がREITなどの支えになっている部分もあります。0.1を超えてきたりすると、多少ならずとも不動産関連のETF、あるいは株に対して影響が出てくる可能性がありますので、長期金利の動きには注意をしていきたいです。
また、日米の金利が同じように上昇するのであればよいですが、アメリカの金利が上がらないで日本の金利だけ上がるとなれば、ドル円の下落、つまり円高につながりかねません。日米の金利差が縮小して円高に触れるという典型的なパターンになりかねませんので、現在は少しずつ上げていますが、アメリカの長期金利も併せて見ていく必要があります。
国内の様々な指標をみると、全体的には悪くありません。ところがなかなか株価は上がりません。外部環境に多少影響を受けている部分がありますが、本当に日本株が割安なのかどうかという観点でも見ていく必要があるでしょう。
『グローバルマネー・ジャーナル』(2017年4月12日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による
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