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日中戦争の仕掛け人。日本会議以上に危険な「台湾ロビー」の正体=高島康司

「台湾ロビー」の中核は台北政府から李登輝元総統に移行

ところで、長い間「台湾ロビー」の中核は台北政府であった。だが2000年ころからこの傾向は大きく変化し、元総統の李登輝が中心的な人物になった。

ちなみに李登輝は、蒋経国の死後、その後継者として中華民国の歴史上初めて選挙で選ばれた総裁となった人物だ。中華民国総統、中国国民党主席に就任し、中華民国と中国との関係改善を中心的な政策とした。

しかし、2000年に総統を退いた後、大きく方針を転換し、台湾独立の立場を明確にした。「中華民国は国際社会で既に存在しておらず、台湾は速やかに正名を定めるべき」と主張する台湾正名運動で総召集人を務め、2001年7月には国民党内の本土派と台湾独立派活動家と共に「台湾団結連盟」を結成した。形式上では既に政界を引退しているものの、独立運動の精神的な指導者と目されている。

このような李登輝元総統が「台湾ロビー」の中核にいることで、「台湾ロビー」の方針は台北政府ではなく、いまは李登輝を中心とした独立派の意向で動かされている。

「台湾ロビー」は「日本会議」とも深く関係している

そして興味深いことに、現在の「台湾ロビー」は、憲法改正を行い、天皇制国家復活を夢見る「日本会議」と連携する関係にある。現在の改造安倍内閣の閣僚20名のうち、14名は「日本会議」か「神道政治連盟」、またはその両方の所属であるが、彼らは全員「台湾ロビー」の一員として、李登輝元総統と近い関係にある。

また安倍首相だが、たとえば2015年7月23日には、李登輝元総統と都内のホテルで密会していたことが台湾のメディアによって伝えられている。李登輝は「台湾ロビー」の筆頭であった岸信介の孫である安倍晋三に早くから目をつけ、親密な関係を維持しているという。そして、安倍政権の対中政策の立案を指南しているのは、李登輝だと見られている。

李登輝の日本担当、金美齢

また、日本に常駐して「台湾ロビー」の人脈を結集させる中心軸となっているのは、評論家で日本に帰化した金美齢という人物だ。民進党政権では台湾総統府の国策顧問を務めたこともある人物で、日本では評論家としてマスコミに登場し、さまざまな提言をしている。

提言は、櫻井よし子らの右派論壇と基本的に同じ内容だ。「愛国心の賛美」「激しい中国脅威論」「日中戦争の扇動」「自主憲法制定の支持」などだ。

金美齢は新宿御苑のビルに広い事務所を持っている。ここは「日本会議」のメンバーのたまり場のような状態になっており、稲田朋美高市早苗山谷えり子のような「日本会議」に所属する右派系議員も多く参集している。この事務所は安倍政権の対中政策が立案される場所なのではないかとも見られている。

「日本会議」と「台湾ロビー」が日本の統治機構に浸透

安倍政権の背後には「日本会議」が存在することは広く知られるようになっている。「日本会議」の中核となってるのは、宗教団体「生長の家」の創始者である谷口雅春の信奉者の集団と、天皇制国家の再興を主張する宗教団体だ。「日本会議」はカルトであるとして、欧米のマスメディアの激しい批判の対象になっていることは有名だ。

しかし、この「日本会議」は「台湾ロビー」の中核的な組織でもあり、李登輝や金美齢らとそれこそ一蓮托生の関係にある。言って見ればこれは、「日本会議」とともに「台湾ロビー」が、日本の統治機構に深く浸透していることを示している。

我々はともすると「日本会議」だけに注目してしまうが、「台湾ロビー」は「日本会議」を支援し、その対中国観に大きな影響力を与えていると見ることができる。

Next: 日本の政界・マスコミは小泉政権下で「台湾ロビー」に占拠された

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