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日中戦争の仕掛け人。日本会議以上に危険な「台湾ロビー」の正体=高島康司

安倍政権の対中政策に大きな影響を与えているのは「台湾ロビー」と、それに連携する「日本会議」だ。中国との対峙を日本に求める、知られざる勢力について紹介しよう。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2016年8月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本の対中政策を操る隠れた勢力「台湾ロビー」とは何者か

中国の度重なる領海侵犯

オランダ、ハーグの仲裁裁判所によって中国の南シナ海の南沙諸島における領有権の法的な根拠が否定されてから、南シナ海のみならず東シナ海の尖閣諸島においても、日本が主張する領海への度重なる侵犯がほとんど毎日のように起こっている。一時は過去最大規模となる230隻の漁船による一斉侵犯も起こったが、最近は数隻の海警(中国の巡視船)による領海侵犯が頻繁になっている。

「国際的な圧力」は腰砕け状態

一方、中国に対する国際的な圧力は実質的に腰砕け状態になっている。

一時オバマ政権は仲裁裁判所の裁定に中国が従わない場合、中国の国際的な威信を傷つける制裁的な処置も考えていたが、アメリカの提案に同調する国が6カ国に止まったため、制裁的処置は断念した。

また、ASEAN外相会議では、カンボジアなどの反対で中国を名指しで非難する共同声明を出すことはできなかった。さらにEUは、南シナ海の問題に懸念は表明したものの、中国を名指しすることは避けた

このように、中国を正面から非難している国は、仲裁裁判の原告であったフィリピンや、南沙諸島で中国と激しく対立しているベトナムくらいで、他のほとんどの国は中国による仲裁裁判所の裁定を無視する動きを半ば容認し、また傍観する方向を選択した。裁定は実質的に無効になりつつあるのが現状だ。<中略>

【関連】安倍政権の背後にある「日本会議」の知られざる実態と自民党=高島康司

尖閣諸島問題の「常識」を疑え

しかし、そもそも尖閣諸島の現在のような緊張はなぜ始まったのだろうか?問題が錯綜している現在、この問題の本質を確認しておいてもよいだろう。

だが、このような質問をすると答えは分かり切っていると言われそうだ。経済成長にしたがって中国経済は拡大したので、エネルギーや食料などの戦略物資の輸送ルートを確保しなければならなくなった。東シナ海を中国が完全にコントロールできる内海にする必要から、現在のように領有権に対する主張を強めているという説明だ。また尖閣諸島には海底ガス田が発見されており、これの開発を行うという動機もある。これは南シナ海でも同様だ。

確かにこの説明は間違ってはいない。しかし、少なくとも尖閣諸島に関する限り、この説明ではまったく不十分だ。

もちろん、尖閣諸島での日中の緊張関係が始まったのは最近のことではない。1978年には108隻の中国漁船が領海侵犯したことがあった。しかしこれは例外的な時期として見られている。これは、当時の自民党総務会長であった中曽根康弘による、A級戦犯の靖国合祀に対する抗議としての意味が強かった。

80年代と90年代には、歴代の内閣の総理大臣は靖国の参拝を控える傾向が強く、日中関係はかなり良好に保たれていた。日中蜜月時代である。

それというのも、中国も日本も、尖閣諸島は係争地であるという認識をもち対応していたからだ。周知のように日中両国は、尖閣諸島に海底ガス田が発見された1968年に領有権の主張を開始したが、1972年の田中政権による日中国交回復交渉の折り、「日中両国とも尖閣諸島の領有権を主張せず、棚上げにする」という合意が成立した。

80年代と90年代には日中両国ともこの「棚上げ合意」を順守し、中国の漁船が領有権を侵犯したとしても、日本は漁船を拿捕して船長を裁判にかけることはなく、ただ巡視船が追い払うだけであった。これは日本の国内法を適用して裁判に持ち込むことは、尖閣諸島は日本の管轄であることを主張することになるためであった。それを回避するため、尖閣諸島には国内法は適用しない処置をしたのである。

この「棚上げ合意」は2000年に締結された「日中漁業協定」によって明文化された。2000年に成立した森政権は首相の「神の国発言」などもあって日中関係は若干悪化した。だが「棚上げ合意」は守られ、日中の関係は比較的に安定していた。

状況を一変させた小泉政権

しかし、この状況を一変させたのが2001年に成立し、2006年まで続いた小泉政権である。前任の森政権は、「神の国発言」などで中国との関係を徐々に悪化させていた。だが小泉政権は、歴代の政権とは大きく異なり、これまで国際的な批判が強いためタブー視されていた首相の靖国参拝を、中韓の強い抗議にもかかわらず毎年繰り返した

これに呼応するかのように、中国では大規模な反日デモが幾度も起こり、政冷経熱という経済の依存度を強めつつも、政治的な関係は悪化するという、これまでの蜜月関係とは打って変わった状況に変化した。

しかしそれでも尖閣諸島における「棚上げ合意」は日中両国によって守られ、一方が領有権を強烈に主張する現在のような状況ではなかった。

「棚上げ合意」を破棄した菅政権

だが2010年、この安定した日中関係の最後の砦である「棚上げ合意」を破棄したのは、民主党の菅政権の前原国土交通相であった。警告を無視して巡視船に体当たりした中国漁船の船長を逮捕し、沖縄の地方裁判所で裁判にかけたのである。

これは日本の国内法を尖閣諸島に適用する行為であり、領有権の明白な主張になる。この時点で、これまで長い間尖閣問題の処理の基本であった「棚上げ合意」は、日本によって破棄された。

中国の怒りはこれまでになく激しく、日本に抗議したものの、菅政権は「棚上げ合意」そのものが存在しないとして、これまでの問題処理の原則を全面的に否定した。

さらに2012年には、野田政権が栗原家の所有であった尖閣諸島を買い取り、正式に国有化した。これを領有権の明白な主張と認識した中国は激しく反発した。

日本の対中外交を操る「日本会議」以上に危険な存在

これが、日中関係悪化のこれまでの経緯である。経済発展とともに強まる中国の権利主張もあるが、関係を意図的に悪化させた責任の一旦は日本の対中政策の変化にあることは間違いない。小泉政権以前と以後では、対中政策は蜜月から敵対へと正反対の方向に動いた。関係はその後も悪化し続け、いまに至っている。

これが事実なら、なぜ小泉政権は関係をあえて悪化させたのだろか?明らかに80年代と90年代の対中政策は、180度正反対のものになった。なぜそうなったのだろうか?

実はこの問を追求すると、日本政府の対中政策をコントロールしている非常に大きな勢力があることが見えてくる。いま内外で「カルト集団」と非難されてる「日本会議」以上に危険な勢力の存在が見えてくるのだ。

その存在こそ「台湾ロビー」である。

Next: 台湾の国益実現のために日本で活動する「台湾ロビー」の正体

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