日本経済にとって、巨額のバラマキはどこまで効果的なのだろうか?今回ご紹介するデータによれば経済対策は2倍の56兆円でも足りない上に、無駄遣いに終わる可能性が高い。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』)
プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
※本記事は『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2016年8月1日号)の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。月初の購読は特にお得です!
「28兆円の大胆な経済対策」バラマキは今回も無駄遣いに終わる
経済対策で使った資金は一体どこに消えているのか?
7月27日、安倍晋三首相は8月2日に閣議決定する経済対策について「事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策をまとめたい」と表明した。事業規模としては2009年の56.8兆円、08年の37兆円に次ぐ規模になる。
同日、経済対策に盛り込む低所得者への現金給付について政府・与党は、1人あたり1万5000円にする方針を固めた。現金給付の対象は住民税が非課税の低所得者約2200万人となる見通しで、単身者の場合は年100万円未満の所得が目安となる。事務費なども含めた必要経費は約3500億円を見込む。
7月26日には、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会が、2016年度の最低賃金を全国平均で時給24円引き上げ、822円にする目安を決めた。5年連続で2ケタの引き上げとなり、第2次安倍晋三内閣発足以降の4年間で70円以上、上がったことになる。
矢継ぎ早の経済対策だが、こうした巨額のバラマキは効果的なのだろうか?
そこで、37兆円つぎ込んだ2008年(平成20年)、56.8兆円に達した2009年を含む、日本経済の規模の推移を見てみた。
名目GDPは2007年4月~2008年3月期から、2期連続で減少した。経済対策の効果で2010年3月に終わる年度には増加したが、2007年度には遠く及ばない。では、これら約94兆円もの経済対策はたんなる無駄遣いだったのだろうか?政府の歳出と税収とを見てみよう。
2008年から2009年にかけて確かに支出は急増するが、その一方で、税収は急減する。また、その後にも目立った回復が見られないことから、この経済対策で使った資金は、政府には戻っていないことが分かる。これでは投資ではなく、浪費だ。
Next: 2倍の「56兆円」でも実は足りない経済対策、残された唯一の道は?