「異次元に愚か」だった日銀の金融緩和
次に大きな「罪」を犯したのが、当初2年で達成すると豪語した2%の物価目標です。
安倍総理を支える「リフレ派」は、日銀の不十分な金融緩和こそが「デフレ」の原因で、日銀が十分な緩和をすれば、原油が下がろうと、人口が減ろうと、インフレに出来る、と主張しました。そして日銀は「異次元緩和」を実施しました。
ところが、3年以上たっても物価は上がらず、目標達成は後ずれするばかり。
政府日銀は想定外の原油価格下落のせいにしていますが、もともとは関係ないと言っていたもののはずです。異次元緩和で為替が円安になり、輸入コストが上昇して物価が上がりかけたのですが、賃金が増えない中で物価が上がれば、実質賃金が減少して購買力が低下します。
結局、コスト高による物価押し上げは景気を悪化させ、また物価上昇率が低下しました。つまり、日銀の異次元緩和、円安で物価を上げるやり方は失敗したのです。これが3つ目の「罪」ですが、これにとどまりません。
「マイナス金利」で追い打ち
失敗を認めたくない日銀は、それならと言って今度はマイナス金利策に打って出ました。これが第4の「罪」、期待への働きかけに失敗し、むしろ個人の不安をあおって景気を悪化させました。
例えば、リフレ派筋は、インフレ期待を高めれば、個人は物価が上がる前に買い急ぐだろうとの想定をしていました。ここでの誤算は、消費が弱かったのは物価が下がるまで待とうとの「デフレ期待」が原因と考えたことで、これを変えても消費が増えなかったことです。しかし、これはリフレ派の前提が間違えていたにすぎません。
内閣府の「消費動向調査」をみると、個人にはもともと「デフレ期待」などありませんでした。この調査には1年後の物価を問う項目がありますが、野田政権当時も物価が下落すると見る人は5.8%にすぎず、上昇を予想する人が68.1%も占めていました。2005年当時は物価上昇を予想する人が44%でしたから、「デフレ」意識が強まったのではなく、逆に物価先高観が強まっていました。
「所得減少」の現実から逃げ続けるアベノミクス
つまり、個人消費が弱かったのは、物価が下がるのを待っていたためではなく、所得が増えなかったためでした。そこへ政府日銀がさらに物価上昇の「脅し」をかけ、実際に物価が上がって実質所得が減少したために、益々消費は減少し、おまけにマイナス金利策でいずれ預金金利までマイナスになるのでは、との不安が募りました。
所得が増えず、年金が年々先細りとなるところへ、物価を上げるぞ、マイナス金利にするぞと脅されたために、消費者は委縮し、このところ「消費性向」が低下して、これがさらに消費を抑制する形になっています。「期待」を持たせるはずが、逆に消費者の「不安」を高めてしまったわけです。