時給400円程度で働くワーキングプアが数十万人。現在のイギリスは将来の我が国です。英国や大陸欧州の国々の状況を見る限り、我が国が辿るべき道はあまりにも明らかです。(三橋貴明)
記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年6月23日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
時給400円のワープアが数十万人、現在の英国は将来の我が国だ
イギリスの実質賃金が下がり続けている理由
イギリスといえば、英国立経済社会研究所によると、実質賃金が2008年から0213年にかけ、8%下がっています。失業率は5%台と低いですが、最低賃金(時給400円程度)で働くワーキングプアが数十万人(実習生、と呼ばれているそうですが)いるなど、雇用環境は良くありません。
日本も人のこと言えませんが、イギリスでこれほど長期間、実質賃金が下がり続けるのは、1964年以降で初めてとのことです。
実質賃金の下落=生産性の低下です。イギリス企業もまた、生産性向上のための投資ではなく、「安い労働者を雇う」方向に走っているわけです。すなわち、外国移民です。
キャメロン政権は外国移民を年間10万人に抑える、との公約を謳っていたのですが、昨年は30万人がイギリスに入りました。結果的に、EU離脱派は「雇用を奪われている」「賃金切り下げ競争が生じている」と、移民政策に反対しているわけでございます。
国民投票の結果がどうなるかは分かりませんが、いずれにせよ現在のイギリスは将来の我が国です。
イギリスで今月23日に行われる、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票で、登録した有権者は過去最高の4649万人余りに上り、イギリスの将来を決定づける国民投票への関心の高さをうかがわせています。
イギリスの選挙管理委員会は21日、EUからの離脱の賛否を問う国民投票に向けて登録した有権者の人数が、4649万9537人に上ったと発表しました。<後略>出典:英国民投票 登録した有権者は過去最高に – NHKニュース
「銃弾」が左右する英国民投票
本日の『おはよう寺ちゃん活動中』でも語りましたが、本来、イギリスは国民投票を延期するべきなのではないかと思います。理由は、もちろん残留派のヒロインであったジョー・コックス議員が射殺されるという、ショッキングな事件が起きたためです。
しかも、犯人は、
「ブリテン・ファースト(英国を第一に)」
と叫びつつ、コックス議員を撃ったと報じられているため、国民投票に多大な影響を与えざるを得ないでしょう。
イギリスがEUから離脱するか否かは、同国はもちろんのこと、世界の歴史を決定づける重大な問題です。それが「銃弾」により決まってしまうとなると、さすがに背筋が寒くなるのを覚えます。
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