小学校の校外学習で使うバスをミスで手配できなかった旅行代理店の女が、このミスを隠すため小学校に脅迫の手紙を投函したとして、威力業務妨害の疑いで逮捕されたと報じられている。
逮捕された女は先月26日、さいたま市内の小学校のポストに「小学校児童さん、または職員の家族に何かが起こります。今日までに仕込みがすべて終わりました」などと書かれた手紙を投函。翌日に予定されていた校外学習を延期させるなど、小学校の業務を妨害した疑いが持たれている。
取り調べに対し女は「手配できたと思ったバスが手配できず、それを隠すためにやった」と供述しているという。
9年前にもあった同様の事例
一定周期で見聞きする機会があるといった印象の、修学旅行などの学校行事における旅行会社の不手際。直近では今年の9月にも青森市の中学校において、旅行会社のミスにより修学旅行の行程の変更が相次ぎ、見学先が半減する事態が起きたことが報じられたばかり。
後の旅行会社による調査報告によれば、担当者はミスを旅行前に把握していたものの、上司や同僚に打ち明けられず、また社内のチェック体制も機能していなかったということだ。
また、さらに過去にさかのぼること2014年には、今回の件と同様に高校の遠足向けバスを手配し忘れた旅行代理店の社員が、遠足を中止させてミスを隠そうと、生徒を装い「遠足を中止しなければ私は消える」といった自殺をほのめかす手紙をでっちあげ、遠足前日に同校に届け出るという行為に。
ところが、学校側は全校生徒の意思を確認したうえで遠足の実施を決行。当日になって、バスが来なかったことで手配ミスが発覚し、結局社員は偽計業務妨害容疑で警察に逮捕されたというのだ。
いずれも自分が犯してしまった手配ミスを、失敗を隠したいといったプライドの高さゆえか、ウソやでっちあげによって上塗りをして有耶無耶にしようとするも露見してしまい、罪を負ってしまうといったこれらの話。
ちなみに、そもそも旅行手配のなかでも最重要と思われる“足の確保”を、どうして旅行会社の担当者らはこうもミスってしまうのか、といった素朴な疑問も浮かんでくるところなのだが、2019年にバスの手配ミスで修学旅行が中止になったという北海道苫小牧の小学校のケースでは、旅行会社の担当者がバス会社から見積書を受け取った時点で、申し込みが完了したと勘違いしてしまい、結果として手配漏れとなってしまった……といったこともあったようだ。
運転手不足でバス手配ミスのリカバリーはより困難に
いっぽうで、以前のケースと今回の件との状況の違いということでいえば、昨今は観光バスにおいても運転手不足が深刻化しているという点。
新型コロナの影響で旅行業界が大打撃を受けた際、バス会社においても仕事が激減し、運転手の離職・転職が相次いだのだが、今年に入り一転して観光需要が回復するも、運転手の確保はまったく思うようにいっていないという。
修学旅行先として人気の沖縄でも、この運転手不足によって、今年10~12月の修学旅行に累計で1,200台分の手配ができないとの試算もあるようで、県が県外からの運転手誘致を支援するといった動きも出ているようなのだが、運転手不足解消の見通しは立っていないというのだ。
こういった状況から、以前ならばミスに気付いた際に日程が迫っていても、ワンチャン手配が間に合うかもしれない……といったことがあったかもしれないが、今ではとてもそうはいかなそうということで、この手の手配ミスのリカバリーは相当難しくなっているといったことは、間違いなく言えそうである。
ただ、そうは言っても自分のミスを隠すために、学校側を脅迫するようなことが許されるわけがないのは言うまでもないこと。先述の9年前のケースでは、担当者は会社を懲戒解雇となり、旅行会社は謝罪会見を開く羽目になったうえに、観光庁から営業停止などの処分が下されそうになったということで、今回の件も今後さらなる波紋が広がる可能性もありそうだ。
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