少子高齢化・人口減が深刻化するなか、映画『縁の下のイミグレ』が話題になっている。発展途上国から技能実習生として日本に働きに来た女性が主人公だ。今まで日本人がまったく顧みることがなかった「技能実習生の制度」の問題点が盛り込まれている。しかも、深刻な内容を扱いながらも、ブラックなコメディになっているところがすごい。今回、主役を演じたナターシャさんにインタビューする機会を得た。彼女がどんな思いでこの映画に出演していたのか、そこのところを聞いてみた。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
「技能実習生の制度」の問題点を浮き彫りにした話題の映画
最近、なるせゆうせい監督・脚本、ナターシャ主演の映画『縁の下のイミグレ』が話題になっている。
この映画は『アインが見た、磐い空。あなたの知らないベトナム技能実習生の物語』(学而図書刊/近藤秀将著)という小説を原作にして、なるせゆうせい監督が映画化したものだが、今まで日本人がまったく顧みることがなかった「技能実習生の制度」の問題点をとことんあぶり出した映画であった。
技能実習生制度は、「外国人に技能を教える」という名目で外国人を呼び寄せて仕事をしてもらいつつ報酬を払う制度である。ところが、これがいつしか外国人労働者を低賃金で働かせ、さらには労働力不足を解消するための「便利なツール」として使われるようになっていった。
「技能を教える」というのは大義名分で、安い賃金と悪条件でひたすら外国人労働者を働かせ、ときには給料の未払いの問題も発生することがある。この映画『縁の下のイミグレ』は、まさに給料未払いの問題を行政書士に相談することから、技能実習生制度の問題点が次から次へと暴かれていく映画だった。
すでに界隈からは「技能実習生制度の問題を網羅的に知りたかったら、絶対にこの映画を見よ」と言われているくらい、技能実習生制度の問題点が盛り込まれている。しかも、深刻な内容を扱いながらも、ブラックなコメディになっているところがすごい。
さて、この映画にはフィリピンから実習生として来日した女性ハイン役として、ナターシャさんが出演している。この映画では見事に役を演じきっていたのだが、彼女はこの映画がはじめての主演だった。
彼女がどんな思いでこの映画に出演していたのか、そこのところを聞いてみた。
いったい何者?主演のナターシャさんにインタビュー
鈴木傾城(以下、鈴木):映画『縁の下のイミグレ』、おもしろかったです。この映画はけっこう難しい映画だったと思うのですが、大丈夫でしたか?
ナターシャさん(以下、ナターシャ):はじめての主役だったのですごく難しくて、最初は緊張しました(笑)。
鈴木:私、原作にベトナムとあるのでてっきりベトナム人だと思っていて、舞台挨拶でフィリピンって聞いて「え?」となって、でも日本で暮らしておられて日本語で生きているので、いや日本人かなとも思ったりして……。それで、ナターシャさんがもうベトナムなのか、フィリピンなのか、日本なのかわからないので「ナターシャさんの謎」を今日は解き明かすために参りました。
ナターシャ:はい、よろしくお願いします(笑)。
鈴木:ナターシャさんは、もうずっと日本に住んでおられたってことですか?
ナターシャ:そうです。両親はフィリピン人ですが、私は日本で生まれて、育ってきました。
鈴木:じゃあナターシャさんは国籍も日本人?
ナターシャ:いえ、国籍はフィリピンです。
鈴木:じゃ、フィリピン系日本人じゃなくて、フィリピン人ってことですね。
ナターシャ:そうです。でも、生まれも学校もずっと日本です。
鈴木:そうなんですね。そういえば、テストがたいへんだとか。
ナターシャ:そうなんです。でも、終わりました。点数は、ギリギリですね(笑)。
鈴木:そうですか(笑)。ナターシャさんの学校は日本の普通の学校なんですよね。
ナターシャ:そうです。いまの高校は外国の方とフレキシブルスクールみたいな感じなんです。全国で2校しかないって言っていました。大学みたいな感じです。時間割が決められて、いろんな外国の人もいて……という感じです。