Q1:その企業は消費者独占力を持っているか
持っています。アップルはIT会社というよりは、デザイン会社の側面の方が強いです。消費者独占力は、他企業以上に強いものがあります。
Q2:その企業を理解しているか
理解しています。この会社のビジネスは、単純なように見えて、案外複雑です。
製造業もやっていますが、アプリも作っていて、それを使って金儲けできるシステムも確立しています。
アップル製品の在庫が積み増しされているという噂から、アップルの株価は大暴落していますが、もし、既に販売したアップル製品から継続的にお金を得られるのであれば、そこまで大きな損失にはならず、むしろ割安になってしまうのでは?
という可能性もあります。
今後の動向を分析してみましょう。
まずは、アップルが売っている商品の説明から見ていきましょう(当たり前ですが元は全部英語です。英語が読める人は英語で読んでいただいて結構です。読めない方は、重要な部分を私が要約していきますのでご覧ください)。
2015 Annual Reportに書かれている商品は、
商品(Products)
iPhone、iPad、Mac
OS
iOS、OS X、watchOS、tvOS、Application Software
サービス
Intenet srvices(iTUnes Store)、iCloud、アップルCare、アップル Pay
さて、その他の商品の欄もありますが、メインはこれらの商品ですね。OSは商品(Products)の中に含まれていますので、商品の売上を見れば、この会社のビジネスの実態がつかめます。
2015年時点でこんな感じです。
Products: | 2015 | 割合 |
---|---|---|
iPhone | $155,041 | 66.34% |
iPad | $23,227 | 9.94% |
Mac | $25,471 | 10.90% |
Services | $19,909 | 8.52% |
Other Products | $10,067 | 4.31% |
Total net sales | $233,715 | 100.00% |
iPhoneの割合がすごいですよね。
さて、もう一つアップルで大事なのが、どこで売れているかということですよね。自分としては、ブランドのイメージ評価としてこちらのほうが重要です。
というのも、正直な話、富裕層をしっかり確保できていればいいわけですよ。iPhoneはブランド品なので。
そう考えたときに、先進国の富裕層のシェアをしっかり維持できているかということが大事になってきます。
Net Sales: | 2015 | 割合 | Change | 2014 | Change | 2013 |
---|---|---|---|---|---|---|
Americas | 93,864 | 40% | 17% | 80,095 | 4% | 77,093 |
Europe | 50,337 | 22% | 14% | 44,285 | 8% | 40,980 |
Greater China | 58,715 | 25% | 84% | 31,853 | 18% | 27,016 |
Japan | 15,706 | 7% | 3% | 15,314 | 11% | 13,782 |
Rest of Asia | 15,093 | 6% | 34% | 11,248 | -7% | 12,039 |
Total net sales | 233,715 | 100% | 28% | 182,795 | 7% | 170,910 |
割合のところを見てみると、やはり一番売れているのはアメリカです。次に中国、次にヨーロッパ、次に日本。というか、日本は金額の占める割合でみれば3%しかないんですね。
その他アジアに入れてしまってもよさそうなもんですが、故スティーブ・ジョブスが日本を好きだったので気を使ってくれているんですかね?(笑)
さて、ごらんのとおり、2015年までは順調に成長してきていますよね。しかし、アップルは直近の四半期報告で成長が止まりました。
そのため株価は下落しています。では、どこの地域の売上が減ったのでしょうか?
(前年比というのは、2015年の同四半期と比べてどれくらいの売上をあげたかを示しています)
2016 | 2015 | 前年比 | |
---|---|---|---|
Americas: | |||
Net sales | 19,096 | 21,316 | 90% |
Operating income | 6,116 | 7,186 | 85% |
Europe: | |||
Net sales | 11,535 | 12,204 | 95% |
Operating income | 3,602 | 4,112 | 88% |
Greater China: | |||
Net sales | 12,486 | 16,823 | 74% |
Operating income | 4,818 | 6,714 | 72% |
Japan: | |||
Net sales | 4,281 | 3,457 | 124% |
Operating income | 1,930 | 1,699 | 114% |
Rest of Asia Pacific: | |||
Net sales | 3,159 | 4,210 | 75% |
Operating income | 1,095 | 1,600 | 68% |
というわけで、これを見ると日本以外の国では、すべて売上が減少しています。
特に減少著しいのは、中国とアジアです。個人的な見解としては、これらの国では中流階級が成長していない点があげられます。そのため、格安スマホが登場したので、安さを重視する層がそちらに流れ、高価格帯のiPhoneの所持をあきらめたのではないのかと考えます(個人的には、iPhoneはその方がブランド価値を高められる気さえします)。
確かにアップル売上の全体だけを見れば下落していますが、ブランドを確立する方向性としては、先進国での下落の割合は低く、富裕層を支配している可能性が高いため、今後も富裕層をメインに堅実な売上が見込めると考えるのが妥当ではないでしょうか?
さて、さらに商品別売上を見ていきましょう。
Net Sales | 2016第1四半期 | 2015第1四半期 | 前年比 |
---|---|---|---|
iPhone | 32,857 | 40,282 | 82% |
iPad | 4,413 | 5,428 | 81% |
Mac | 5,107 | 5,615 | 91% |
Services | 5,991 | 4,996 | 120% |
Other Products | 2,189 | 1,689 | 130% |
Total net sales | 50,557 | 58,010 | 87% |
商品別でみれば明確ですが、iPhone、iPadの売上が落ち、Servicesの売上が上昇しています。
これは、iPhone自体は多くの人がすでに所有していて買われなくなってきていますが、サービスは使われていて、収益が上がっていることを示しています。
もちろん、これが悪いこととは思いません。
スマホって1年で買い替えるものではないので(人によりますが2~4年の周期での買い替えではないでしょうか)、そうなれば、どうしたって需要に波は出ますよね。
しかし、サービスに波は出ません。使われていれば、サービスの売上は伸びるのです。
そういう意味で、私はサービスの売上に今後も注目していきたいです。このサービスが減りだしたら、「ん?大丈夫か?」と疑っていくべきだと思います。