ブログも大人気の井戸さんですが、メルマガを発行しようと思ったきっかけは?
僕は基本的に講演とかやらないんですね。2年前から講演依頼は全部断っているんです。講演に出かけて「先生」とかって言われると気持ちよくなって、自分が偉いと勘違いしちゃうんです。嫌だとは思うんだけど、どうしても勘違いしちゃう。自己啓発のセミナー講師と会ったりすると、勘違いが鼻につく奴とかいて……そうなったら、気持ちが悪いでしょ(笑)。ですから、今は、講演は一切断っているんです。
でも、ブログをやっていると、飲食店で働いている人や、起業したい若い人からの質問がすごく多いんです。たぶん僕の年齢が若いってこともあると思うんです。ITの世界なら僕の年齢でも世に羽ばたく方も多いですよね。でも、飲食業界では、僕の年齢で、同じレベルでやってる人はいないんです。そこには革新的な何かがあると興味を持ってもらえているようです。だから、本当は、質問にも積極的に答えていきたいんです。
ただ、ご存知の方も多いでしょうが、年明けに僕のTwitterが炎上したでしょ(笑)。それに、ブログもしょっちゅう炎上するから、コメント受け付けていないんです。ですから、一般の方の質問に答えられる場所がなくなってしまったんです。でも、僕に興味をもっていただいている方がいるのも事実なんで、だったらそれに変わる何かをと思って、メルマガを始めることにしました。
飲食業界で井戸さんが若くして成功できた理由は?
一昔前まで、僕の年齢で成功するのは無理でしたね。飲食業界は、当たって繁盛すれば、そこそこ儲かるんですよ。でもノウハウは、誰も積極的に教えたがらない。自分たちのスタッフにノウハウを教えたら独立されちゃうじゃないですか。だから結局、そのスタッフを独立させずに、囲ってしまうのが、飲食業界の従来のやり方です。
僕の異名の「ロードサイドのハイエナ」は、郊外の街道沿いから撤退した店舗を再生する手法から名付けられたんですが、その情報もちょっと前まで入ってこなかった。簡単に居抜き物件っていいますけど、昔は情報を取るツールがなかったんです。今なら、ネットがあって、情報があって、そういうマーケットもあるから、僕でもできるのです。ネットがなかった時代は、一部の不動産業者と、ブローカーが情報を独占して、大手にしか情報は入っていなかったはず。今は僕らの所まで情報が入るようになったけど。
それに、飲食を経営している側も、バカだったんですよ。とくに、バブル時代の外食経営者は酷かった。バブルのときのバカな経営者は「俺のところはこんな高い家賃を払っている」って自慢する。でもどうやって、そのお金は回収するの? そういう人は見事に飛んでいきました(笑)。 僕らの時代になると、銀座のとんでもない一等地なのにすごく安く借りたというのが自慢で、出店コストをとにかく抑えるということに注力する時代になったんですね。
最近では、大手のチェーンでも同じような形態をとっているお店もあるようですが?
ウチのお店が開店したスグそばで、ステーキの専門店を次々立ち上げるチェーンもありますね。恥も外聞もないけど無理もないかな。ウチの客単価は1250円くらいありますから。これまで十数年、外食チェーンは『すかいらーく』が『ガスト』になったように、客単価を落とす手法しかなかったんです。1000円を超える客単価でヒットするなんてのは考えられなかったんですよ。『ステーキハンバーグ&サラダバー けん』の成功は、チェーン業界の革命だったんです。でも、出店攻勢をかける前に「教えてくれてありがとう」とお礼のご挨拶くらい欲しかったですけどね(笑)。
『ステーキハンバーグ&サラダバー けん』『ふらんす亭』『とんかつ&サラダバー よしかつ』。井戸さんの経営しているお店は、今も絶好調のようですね。
2011年9月で会社設立から丸5年です。その5年で総店舗数260店舗以上、売上高で165億円を達成しました。2010年度の外食企業売上高伸長率の1位はウチなんですよ。売上高でも前年比230%を達成しています。二位が30%くらいなので、ダントツの成長率だと思います。しかも、二位の会社はウチの兄貴の会社(笑)。兄弟ダブル受賞なんですよ。
なぜ、井戸さんが経営するお店だけが繁盛するのでしょうか?
みんな形だけを真似ているだけだからですよ。本質までは見ていない。現代の外食産業は、店舗にお金をかけずに、本部コストも抑え、いかに非生産的な活動をしないようにして、コスト削減を徹底するかが一番重要なんです。これは簡単には真似できない。
だいたい飲食を経営する人は、勉強しちゃダメなんです。飲食を経営しようなんて人は勉強ができないバカなんですね。バカなんだけど勉強しちゃおうとする。でも、バカが勉強したら、平均以下のことしかできない。勉強しないで肌で気づかないといけない。
例えば、飲食の経営者ってある程度大きくなったら、セントラルキッチンと自社物流を持ちたがるんです。そこで一食分を工場加工して、お店に運んで、暖めるか盛るかチンするだけで、均一のクオリティの食事を常に提供する、それが正しい。勉強すると、こういう答えが出てくるんです。
でも、僕はこれを真っ向から否定したんです。ウチは均一にできていないんです。店によっては、美味しい『けん』と、不味い『けん』がある。でも、不味いトコには、客が来なくなればいい。「いいじゃん、バラバラで」と開き直ったんです。
セントラルキッチンを持つのを止めれば、個々のお店は、料理の技術向上だけを目指せばいい。それに、技術向上は、お店のスタッフのモチベーションにつながるし、何か面白いことを始める応用力もつく。
『けん』では、何かの端材が出たらそれを利用して新しい料理を作ってみようといった、アイディアが現場から上がってくる。でも、それが本来の飲食店の姿ですよね。チェーン展開していくと、こうした本来の飲食店の姿をどんどん削っていってしまう。だから面白くなくなる。
日本人は真面目で勤勉だから現場のスタッフにどんどん頭を使って働いてもらったほうがいいんです。技術が高まれば給料も高く払えるし、独立することだってできる。このほうが幸せじゃないですか?
「ブラックメルマガ」の内容はどんなものになりますか?
ブログとメルマガの住み分けを考えています。ブログはこれから更新頻度も減って、メルマガのほうに移行していくと思います。これまでブログでは、サラっと書いていた事を、メルマガでは、お金も払っていただいていますし、もっと掘り下げて書こうと思っています。
ブログでは、書かれちゃった人は、大変だなーと思って、削除していたところも、メルマガでは実名でバンバン書いていきます。バブルに浮かれて沈んでいった経営者のような素晴らしい失敗例を、実名と実例をあげて解説します。リアルな話だから、これから起業しようという人には、とても参考になると思いますよ。バブルに浮かれて飛んでいった●●の話とかは(笑)。
過去の話ばかりでなく、現代の飲食業界での課題や提案なども、僕の視点で書いていくので、飲食業界や起業を目指す人にとっては役立つ情報を提供できると思います。
それと読者へのプレゼントも充実していきたいですね。お金払って購読していて良かったぁ~と思えるビックリするようなものもご用意していきたいです。
もちろん質問には全てに答えます。ご興味がある方は、購読していただいて、どんどん質問して下さいね。
井戸実さんプロフィール
1978年、神奈川県生まれ。高卒後に寿司職人として外食産業入りした後、「牛角」などを展開するレインズインターナショナルに入社。2005年、エムグラントフードサービスを設立し、「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」第1号店を出店。“ロードサイドのハイエナ”の異名を持つ。ブログ界では、歯に衣着せぬ発言が話題となり、アメブロの毒舌ランキング1位を飾ることも。