まずは簡単に自己紹介をお願いいたします。
「やさしい鍼」という流儀で、ご縁のあるかたのお身体の声に耳をかたむけながら治療している、臨床歴20年の鍼灸師です。東京都杉並区在住。小学生の娘2人をもつ、子育て真っ最中のパパでもあります。忙しいかたにも実践できる、四季にかなったお食事の工夫や暮らし方のコツをお伝えしています。「季節とカラダとくらしを結ぶ」ための健康リマインダーとして、「暦」の活用法をもっとひろめていきたいですね。
鈴木先生が鍼灸の道を目指されたきっかけはどういったことだったんですか?
検査器具などを用いることなく、自分の五感を総動員、おカラダの声に耳を傾けることで見立てをつけていくことに、魅力を感じました。
長い年月をかけて、人のカラダを見立てるということを研鑽し続けてきた東洋医学は現代の医学と異なり、健康を環境とのかかわりの中で「カラダ全体の働きのバランスが取れているかどうか」という視点で考えます。「カラダのパーツ」ではなく、「ひと」という「いのちの営み」を見つめる姿勢に、共感を覚えました。
患者さんとお会いするときの姿勢や、カラダの動かし方など、目から受け止める相手の方の印象から、様々なおカラダの訴えを推し量ります。顔色と表情と肉付きなどから、その人がどんなふうに過ごしているかも分かったり。さらにいくつか質問をするなかで、お返事の仕方や間のとり方から、見立ての補強をしていきます。治療のためにおカラダに触れるときには、すでに「治しどころ」の見当がついているというのが醍醐味ですね。
監修されたコミック単行本『大原さんちの食う・寝る・ココロ』で先生は食養生の指導もなさっていますが、食養生とはどういうものなのですか?
食べることを通して、「カラダを調え、ココロを平安に保つ」ということが適えば、それがその方の「食養生」だと思っています。
四季の移ろいとともに、人のカラダはバランスを常に変えています。夏の暑い日には、カラダを冷まそうとして汗をかきます。冬の寒い日には、カラダを温めようとして熱をおこします。旬の食材を上手に取り入れて、「カラダと季節を結ぶ」食べ方や調理法が、食養生の基本なんです。
また、日常生活のアンバランスを、食べたい食材から自ら知る、ということも大切ですね。「何を食べたいか」「どうやって食べたいか」ということは、「カラダやココロがどうなりたいのか」という「勢い・方向性」を示してくれています。
普段の食事を「一汁三菜」で献立することが、いつも望ましいわけではありません。本当に必要なのは、「ベースになる食べ方を、常に自分で知っている」ということ。
くわしくは、メルマガでご紹介していきますので、お楽しみに。
たとえば今の時期、どのような理由でどのような食養生を行えば楽に過ごしていけるのでしょうか。
熱をにがさないように閉じこもっていた冬のカラダから、のびやかに発散したくなる春は、木の芽が芽吹き始めるように、人のカラダも香りのよいもので呼吸の働きを高めて、春の目覚めをうながしてあげたらよいですね。
フキノトウやタラの芽のような芽吹く食材を香り良く楽しまれると、呼吸が深くなってカラダの緩む働きを鼓舞してくれます。また、食物繊維をたくさん含んだサトイモやサツマイモは、縮こまっていた「お腹の働き」を刺激して、お腹の中をすっきりさせてくれます。
食べて養うよりも、「食べてカラダの内側にたまっているものを発散・吐き出す」のが、春の食養生です。あわただしく息をつめて食事をすることなく、おいしいなぁとじっくり味わいながら、ゆるりと召し上がられるのも、コツですね。
プライベートについてお聞かせ下さい。尊敬なさっている方、影響を受けた方はいらっしゃいますか?またその理由を教えてください。
僕が通った鍼灸学校の創設者で、理事長を務めておられた小林三剛先生には、とても影響を受けています。先生は「易」の大家で、住んでいる環境や四季の「移ろいと関わり合うようにして変化する」ひとのカラダの世界観を教えてくださった。鍼灸師としての「見立ての奥深さ・幅広さ」につながっていると思います。
そしてもう一人。10年間鍼灸臨床を師事した長谷川保先生には、ぼくの「刺さない鍼・熱くないお灸」のベースを叩き込んでいただきました。それが現在の「やさしい鍼」というスタイルにつながっています。僕の鍼灸理論・実技は、長谷川先生に教えを受けた10年間で培われたものです。
鈴木先生が普段の生活で“大事にしていること”を教えてください。
「折に触れて、自分のカラダを感じとる」ということですね。
「心」をスケジュールに預けてしまうと、自分のカラダのことを振りかえることができなくなります。そんなときには、自分の「姿勢・呼吸・脈」に耳を傾けるようにしています。
ふと立ち止まる。そして、自分の姿勢に無理がないかなぁとか、息はどこまで入っているかなぁとか、脈の拍動に乱れはないかなぁなどを、ちょっと気にしてみます。こうしたポーズをとるだけでも、「心」が「カラダ」へ戻ってきてくれるように思います。
朝は「起きたくなって目が覚める」、夜は「眠くなって眠る」。普段の生活を「無理なく丁寧におくっているかどうか」の目安として、いつも気にかけています。
では、一日のタイムスケジュールを教えてください。
夏は朝4時ころ、冬は朝5時ころには、目を覚ますようにしています。床から離れるのはもっと後でもよいのですが、いったんアイドリングの時間を設けるということですね。早起きを心がけていると、自然に早寝するようになります。
起床して身支度を整えると、朝食用のパン生地をこねたり、日課の太極拳のお稽古をします。ブログやご依頼をいただく原稿も、朝のうちに一先ず取り掛かるようにして、アタマやカラダを刺激するようにしています。
7時の朝食は、家族みんなでとります。顔を合わせることで、お互いの睡眠の質やカラダの回復状態を知ることができます。帰宅後、娘たちの鍼灸治療が必要かどうかなども、見当をつけておきます。
9時からは、鍼灸のお仕事。季節の変わり目や、春先のカラダが発散したい時期には、昼食を取らずに過ごすことが多いです。忙しいときには、合間に軽めに軽食を取って、夕食を抜くことも。食べ方の加減は、そのときのカラダやココロのバランスで、こまめに調整するようにしています。夏の暑い日などは、昼食後に仮眠の時間を設けて、カラダに熱がこもりにくくする工夫などもしています。
夕食は6時から7時の間に家族みんなで、できるだけ取るようにしています。夕食後は、鍼灸師のパートナーと臨床のカンファレンスや諸々の打ち合わせ。娘たちの宿題を手伝いながらなので、あっという間です。
こうした「やるべきこと・やっておいたらいいこと・やりたいこと」がなければ、入浴を済ませて、8時半には家族よりも早く就寝してしまいます。夜の12時くらいまで諸事をこなすこともありますが、朝の起床が辛くなるようでしたら、「無理をしたな」と反省しつつ、一日の過ごし方で「カラダを調える」工夫をします。
なるほど。そんな鈴木先生オススメのストレス解消法などがありましたら教えてください。
ストレスを抱えているときには、「肩ひじを張って・息を詰めて」いますよね。「息がのびやかであるかどうか」を意識することで、自分自身の「覇気・活気」・「カラダの勢い」を伺い知ることができます。
日頃「頭を使ってストレスを感じている人」は、「カラダを使う」ことでストレスを発散。「カラダを使うことでストレスを感じている人」は、「頭を使う」ことでストレスを発散。今ある「ストレス=緊張の向き」を、他へ反らしてあげたらよいわけです。ひと休みすることで、「息がぬける感じ」を味わってもよいですね。方法は人それぞれ・その時の気分で選んだらいい。深い呼吸を楽しみ・肩ひじの力が抜けて、ほっとしていることを実感してみてください。
メルマガを出そうと思ったきっかけについて教えてください。
もともと臨床の折、患者さんからご本人やご家族の過ごし方のアドバイスを求められることがありました。食の養生ならば毎日のことですし、オススメ食材や調理法の提案、食べ合わせなどを、こまかくお話することができます。そんななかで、鍼灸治療のご縁から、漫画『大原さんちの食う・寝る・ココロ』の監修のお話をいただきました。東洋医学的な四季にかなったお食事の工夫や暮らし方のコツが、こんなに反響をいただくとは思いませんでしたね。
ただ、季節は「暦」を基準にして、つねに変化にとんでいます。漫画で話題にしていた年回りでは、「暖冬・冷夏」という季節の移ろい。「厳冬・猛暑」のお話はでてきません。ずっと継続して出し続けていないと、今必要な養生をお伝えすることができないというジレンマがありました。定期的にメルマガを出すことで、リアルタイムな養生をお話することができれば、それがかないます。
どのような内容のメルマガになるのでしょうか。
「季節とカラダとくらしを結ぶ」メルマガを発行します。1年を24の節目に区切った「二十四節気」。昔のかたは、四季の移ろいの節目を24に区切ることで、季節に適ったカラダ作りをしていたのですね。季節の移ろいにあわせて、上手にカラダの「変身」をとげるための健康リマインダーとして、ぜひこのメルマガを活用なさってください。「今週のイケテル・カラダ・チェック」・「カラダ占い」・「くらしかたのコツ」・困ったときの「レスキューレシピ」などをご紹介します。
毎週金曜日に発行することで、週末のホッとしたお時間にメルマガを楽しんで頂けたらなぁと思います。
どんな人に読んでほしいですか?
日常のスケジュールに追われ、ついついご自分のおカラダやくらしが後回しになってしまう方。ご自分の日常をもっと味わい・感じ取り、楽しみたい方におすすめします。ぜひ、ちょっと視点を変えた「東洋医学の知恵袋」として、読んでいただきたいですね。
最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
皆さんのおカラダは、ちいさなサインを出しながら、体調を保つためのちょっとした工夫の必要性を教えてくれています。もし、ちいさな声のうちにそれを拾いあげることができれば、病気やケガに悩まされることなく、いつまでも愛すべき人たちと健やかに暮らすことができるでしょう。
忙しいなかでも、健康を保つために、特別なスキルは必要ありません。「季節や体調にかなった食べあわせ」「くらしかたのちょっとしたコツ」をつかんでいれば十分です。毎日の生活のなかで、無理なく誰もが続けることのできる、「カラダの健やかな保ちかた」の知恵。毎週金曜日にお手元に届くメルマガで、あなたが「本来のご自分らしいコンディション」を取り戻し、日々の暮らしをのびやかに楽しむお手伝いができれば、幸いです。
鈴木宣博さんプロフィール
「やさしい鍼」という流儀で治療している、臨床歴20年の鍼灸師。小学生の娘2人をもつ、子育て真っ最中のパパでもある。ライフワークとして、「カラダ・さんぽ」という呼吸を楽しんだり、カラダの仕組みを楽しんだり、ココロの保ち方を楽しんだりをシェアすることを行っている。