馬渕治好の週次メモ「時の花」

時の花　2017/10/30

今週（2017/10/30～11/2）の日経平均予想：21500～22200円
（先週の予想：21200～21750円、実績値：21614.51～22016.50円）

先週の日経平均株価は、連騰記録は過去最長を更新して16日続伸となったあと、10/25（水）に一旦途切れたが、週末に22000円台に乗せるなど、堅調さを維持した。しかしＮＴ倍率（日経平均株価÷ＴＯＰＩＸ）の継続的な上昇に表れているように、海外短期筋による日経平均先物買いが、日経平均ばかりを吊り上げているという感が強い。
ＴＯＰＩＸの上昇率は、日経平均にかなり追いついては来たが、特に先週は時価総額が大きい銀行株の上昇（先週は5.99％）によるところが大きい。この上昇は、米国での長期金利上昇が、米国銀行の貸出金利を押し上げ、採算が改善するとの期待から、米国銀行株が上昇した、ということを材料にしている。しかし、それで日本の銀行株が上がるというのは、根拠が薄いと感じられる。
実態面では、足元佳境となる企業の四半期決算発表は好調な内容が予想され、日本発の国内株価の下落材料は、全般的には大きなものがない。しかし、後の為替欄で述べるように、米国では政治面を中心に種々暗雲が立ち込めており、米国株価と米ドル円相場が大きく下落する（今週など、すぐではないかもしれないが）ことで、述べたような国内株式市況が内包する「脆さ」が露呈し、反落する展開を懸念する。


今週（2017/10/30～11/3）の米ドル円相場予想：112.30～114.20円
（先週の予想：112.20～114.20円、実績値：113.25～114.41円）

連銀議長人事が話題となっているが、それよりも、現体制の連銀が、着実に緩和縮小を進めている、という点が重要だ。
そうした連銀の姿勢にもかかわらず、米国株式、米国低格付社債、米国国債市場などは、金融政策の方向性をなめきって、買われ過ぎの状況を続けている。テイラー氏が議長指名を受けた場合だけではなく、イエレン議長の再任やパウエル理事への指名などにより、来年以降の金融政策が現状路線とあまり変わらないと想定される場合であっても、いずれ米国のリスク資産価格や長期国債価格が、大きく調整する局面がくると考えるべきだろう。それは米ドル安要因でもある。
今月は、米議会上下院で、予算決議（予算の大枠を示すもの）が可決はされたものの、採決は上院は51対49、下院は216対212といった、僅差だった。大統領と議会共和党の関係は、必ずしも良好とは言い難く、個別の歳出法案や税法、あるいは12/8（金）に再期限を迎える暫定予算や債務上限引き上げについて、審議が薄氷を踏み抜く恐れがある。
米国の政治面では、連邦大陪審が、いわゆる「ロシアゲート」の捜査に絡んで、容疑者を訴追することを認めたため、早ければ10/30（月）にも容疑者の身柄が確保されるだろう、と報じられている（10/27（金）付のＣＮＮニュース、日本の各マスコミも引用して報道済み）。容疑者が誰かは現時点ではわからず、今回の訴追だけでは特にトランプ政権に大きな打撃とならない可能性はある。しかし、訴追が１人だけで終わるとは想定しがたい。今後の展開を注視すべきだろう。
また10/30（月）付の日本経済新聞電子版は、11/6（月）に予定されている日米首脳会談で、トランプ政権が対日赤字の是正を要求する意向だと報じている。具体的には非関税障壁の見直しが求められるそうだが、米ドル円相場が何の影響も受けないとは考えにくい。

【今週の一枚】

（ここではグラフが表示されていませんが、実際の「時の花」では、表示いたします。）

※　実際の米ドル円相場の、購買力平価からの乖離率をみると（次ページ図）、プラス20％を超えると概ねピークアウトしており、20％超が長期間続くことはなかった。現在のプラス20％水準は113.92円に相当し、最近の米ドル円相場が、114円を超えては落ちる展開を繰り返しているのは、購買力平価が見えない形で働いているのかもしれない。

※　ちなみに、1985年２月をピークとする乖離の後は、同年９月にプラザ合意が成立し、米国の要請により米ドル安誘導が行なわれた。現在は各国協調によるドル安誘導などはありえないが、20％乖離に近いということは、11月の日米首脳会談などを契機に、米ドル安思惑が広がる展開が否定できない。

以上

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