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決算が読めるようになるノートとは

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ZOZOTOWNの「ツケ払い」が凄い件(推計月間●億円も利用)

ZOZOTOWNを提供する株式会社スタートトゥデイの2016年10月から12月期の決算が発表になりました。

■株式会社スタートトゥデイ 平成29年3月期 第3四半期決算説明会資料 (2017年1月31日発表)

誰が見ても絶好調と言える決算内容です。


商品取扱高は前年同期比+38.3%の616億円。売上高が221億円、営業利益は前年同期比+83.8%の87億円と非常に高い成長率を見せています。


四半期ベースでの売上、取扱高を見ると明らかに成長のスピードが加速しているということがわかると思います。

今日はどういった要因で成長が加速しているのか、ということを少し推測してみたいと思います。

スタートトゥデイは2016年の11月1日から「ツケ払い」というサービスを始めました。

決算の質疑応答でその「ツケ払い」がどの程度、取扱高の増加に寄与したかという点は開示されていません。

■平成29年3月期第3四半期 決算説明会 Q&A集

質問「ツケ払い」「買い替え割」の利用率について教えてほしい。

回答:こちらは非開示とさせていただきます。

他方、ある程度は公開されているデータから推測可能なので、推測してみたいと思います。

スタートトゥデイのこの「ツケ払い」というサービスは、ECとFinTech(Fintech=金融×IT)の融合という意味で非常に興味深いケーススタディになると思います。

EC事業を展開されている方、あるいはFinTech事業を展開されている方にとって非常に勉強になるケースだと思いますので詳細は以下をご覧いただければと思います。


「ツケ払い」とはどんなサービスなのか

「ツケ払い」とは、ZOZOTOWNでの商品代金の支払いを最大2ヶ月後まで延ばせるサービスです。

与信審査はありますが、最大で税込5万4千円までの与信枠が与えられ、一回あたりの手数料は税込324円となっています。

日常にわかりやすく言うと、リボ限度額が5万4千円のクレジットカードをクレジットカードが持てない人にまで発行するような感じです。

クレジットカードとの違いは、クレジットカードのリボ払いの手数料は「年利」という形で定められているのが一般的であるのに対し、今回の「ツケ払い」の手数料は一回あたり固定の324円。かつ支払期限が2ヶ月と定められている点です。




ZOZOTOWNは若いユーザーも多く、クレジットカードを持ってない、あるいは限度額が十分でないというユーザーも多いと考えられるため、このサービスは非常に理にかなっていると言えるでしょう。

また、クレジットカードのリボ払いのように「年利」と言った非常に分かりにくい金融用語を使わずに、「ツケ払い」という誰にでも理解できる名前でわかりやすい支払期限と手数料を設定しているあたりにも非常にセンスを感じます。

「支払期限2ヶ月後、手数料324円」というのは年利●%のリボ払いと同じ

「ツケ払い」の金融商品としての性質を少しFinTech的な観点から分析してみたいと思います。

個人当たりの与信限度額が5万4千円であるという点は上述しましたが、「最大で5万4千円分までをツケ払いにできる」という意味で、一回あたり5万4千円分の買い物を何度もツケにできるわけではありません。


ZOZOTOWNの出荷単価は、今四半期10,143円でした。「ツケ払い」での出荷単価もこの出荷単価と同じだと仮定して以下を計算してみます。

10,143円の買い物代金を2ヶ月後の支払いにすることで324円の手数料がかかるとすると、金利は2ヶ月あたり3.19パーセントとなります。

これを年利(12ヶ月)に直すと20.76%という非常に高い金利になります。(※3.19%を複利で6回=12ヶ月分借りると20.76%)

つまり、この「ツケ払い」というのは年利20.76%のリボ払いとほぼ同じ性質の金融商品だということが言えます。

上でも書きましたが「年利20%のリボ払い」と言うととても胡散臭く感じますが、「2ヶ月後までに支払えば良くて、手数料は324円。」と言われると、とても親しみやすく感じるユーザーも多いのではないかと思います。

また実際の与信審査はGMOペイメントサービスがおこなっているとの記載がありますが、ZOZOTOWNの性質上、商品を配送する必要があり、ユーザーは住所や氏名などを偽ることはほぼ不可能です。従って通常のクレジットカードの与信審査と比べると、貸し倒れリスクをより正確に見積もることができるのではないかと思います。

また一度でもこのツケを踏み倒してしまうと、今後二度とZOZOTOWNで「ツケ払い」が利用出来なくなるという精神的なプレッシャーはZOZOTOWNのファンユーザーにとっては非常に大きいと思いますので、貸し倒れリスクはもしかすると低いのかもしれません 。


「ツケ払い」は月間●億円のペースで利用されている

冒頭に記載した通り「ツケ払い」で支払われた取扱高は開示されていませんが、財務諸表から推定してみたいと思います。


注目すべきは貸借対照表の中の流動資産の中にある売掛金の項目です。

この売掛金の項目が、前年同期の111億円に対し、今四半期は247億円と異常に大きくなっていることがよくわかります。



過去1年分の売掛金の推移を見てみると、やはり今四半期だけ異常に大きな売掛金が生じています。

前四半期(16年9月)末時点での売掛金は116億円で今四半期(16年12月)末時点での売掛金247億円との差額は131億円になります。この131億円が全て「ツケ払い」による未回収分であったと仮定して計算してみます。

「ツケ払い」がリリースされたのは11月1日となっていますので、今四半期の3ヶ月のうち2ヶ月間だけ「ツケ払い」が有効だったと言えます。

つまり2ヶ月間で131億円分のツケの残高が積み上がったということになりますので月間65億円のペースで利用されたと考えることができます。

四半期に直すと195億円分が「ツケ払い」経由での取扱高の増加分と見積もることができるでしょう。


ちなみに今四半と前四半期の取扱高の差は約174億円です。

繰り返しになりますが、「ツケ払い」経由での取扱高は公表はされていませんが、前年度の第3四半期と第4四半期の取扱高の差が30億円程度であったことを考えると、今四半期の取扱高の増加分のうち、かなり大きい部分が「ツケ払い」によるものではないかと言えるでしょう。

まとめ+「ツケ払い」のリスク

・「支払いを2ヶ月後まで先延ばして手数料は324円」という「ツケ払い」は金融商品としては年利20.76%のリボ払いと同じ性質を持つ金融商品です。

・「ツケ払い」のリリース直後の初速としては、月間あたり65億円。四半期換算での利用実績は195億円程度と考えられます。

もちろんこの数字はあくまで推測です。今後増えていく可能性もありますが、今回の「ツケ払い」という仕組みは EC事業とFinTech事業の非常に上手くいった融合の事例と言えるのではないでしょうか。

ちなみにリスクとしては以下の2つが考えられます。

一つ目は、クレジットカードを持てないような人にお金を貸すことになるため貸し倒れのリスクがあります。この辺りはGMOペイメントサービスとの連携によってリスクを低減させていると思われますし、利用実績が増えてデータが蓄積されるにつれ改善されていくと考えられます。

二つ目は決算説明会の資料にもあった通り、将来の売上げを先食いしてしまっている可能性があるというリスクです。

質問:「ツケ払い」による売上の先食い懸念などはあるのか?

回答:サービス自体が始まったばかりであること、またセールを挟んでいることもあり、先食いの影響については不明です。

この点に関しては時間が経ってみないとどのような中長期的な影響があるのかというのはわかりませんが、少なくとも今の時点ではこのサービスは非常に上手くいっているのではないかと考えられるので、今後もこの「ツケ払い」については注目していきたいと思います。

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