結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」
http://www.hyuki.com/mm/
2022年3月15日 Vol.520（サンプル号）
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※epub版 ⇒ https://www.hyuki.com/mm/epub/mm520-149376.epub

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■はじめに
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結城浩です。

ついに『数学ガールの秘密ノート／図形の証明』が刊行されました！

学ぶことに苦手意識を持っている中学生のノナちゃんが証明に挑戦！

三角形の合同を中心に、数学における図形の扱いや、証明の読み方・書き方・考え方、そして未知の問題への取り組み方を対話を通して学んでいきます。

中学生・高校生はもちろんのこと、数学を基礎から学び直したいと思っている社会人や、教える立場にある方にもおすすめできる一冊です。ぜひ、お読みください。

◆『数学ガールの秘密ノート／図形の証明』
https://note15.hyuki.net

ネットでいますぐに読める《Web立ち読み》はこちらです。

◆『数学ガールの秘密ノート／図形の証明』《Web立ち読み》
http://ul.sbcr.jp/MATH-EK1fv

それでは、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

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■目次
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　■不安なニュースで気分が落ち込む
　■情報は出すけれど、価値観は押しつけない - 散歩しながら考えたこと
　■他人と比較しない生活のために - 人生を歩む
　■作業ログを継続するコツ - 仕事の心がけ
　■十年間継続したメルマガは振り返りが持つ深い意味を教えてくれる - 散歩しながら考えたこと

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■不安なニュースで気分が落ち込む
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●質問

結城さんにお聞きしたいことがあります。

感染症の再拡大、日本の経済停滞や国際競争力の低下、大きな自然災害、悲惨な国際紛争など、自分だけではどうしようもない不安なニュースがたいへん多くて気分が落ち込んでしまいます。

このような場合はどうするのが良いでしょうか。

●回答

ご質問ありがとうございます。

不安なニュースを聞くと、たとえそれが自分だけではどうしようもないとわかっていても気分が落ち込みがちですよね。よくわかります。多くの人がそうだと思います。

そういうときには、ニュースから少し離れることが大事です。

確かにニュースは大切なものです。社会の動きを知ったり、災害に備える気持ちを持ったり、自分が取るべきアクションを考える上で大きな助けとなります。でも、それも程度問題です。ニュースのために自分の健康を害してしまっては、大切な活動が行えなくなります。

「自分だけではどうしようもないこと」でむやみに不安になるのであれば、ニュースやネットから遠ざかったり、情報を減らしたりすることをおすすめします。

自分の力ではどうしてもニュースから離れられないとしたら、それこそ、ニュースから離れる必要がある理由となります。

ニュースを提供する側からすると、当然ながら提供しているニュースが重大なものであるというパッケージにして送り出します。ですから、ニュースをずっと聞いていると、それだけが重大なものであるかのような錯覚に陥ってしまいます。

でも私たちにはニュースで報じられること以外にも日々の活動があり、自分が解決しなければならない個人的な問題があり、守らなければならないものがあります。それらのために時間や体力や心や気持ちの余裕が必要です。

人によっては「自分が不快だからといって、大事なニュースから目をそむけてはいけない」という意識で、苦しみつつニュースから離れない人もいます。その気持ちも非常によく理解できますが、自分の心のキャパをよく考えましょう。

ニュースを完全に絶つ必要はありません。ニュースから少しだけでも離れましょう。意識して見ないようにする工夫をしましょう。時間を減らしたり、回数を減らしたり、ニュースの不必要なまでの詳細情報を求めて深掘りするのをやめましょう。

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たとえば私の場合には、Twitterで「期限付きのキーワードミュート」機能を活用しています。しょっちゅう見かけるキーワードで「もうこれはいいです」というときにはそのキーワードを含んだツイートを期限付きで見えなくするのです。

また、ことさらに扇情的なニュースを選んでリツイートする人はアンフォローしたり、ミュートしたり、リストに入れておいたりします。自分が日常的に目に触れるところから減らすためです。

さらに私はCSSの機能を使って、コンピュータでTwitterを開くときには「トレンド」の項目を非表示にしています。

このようにせよという意味ではなく、自分なりの工夫をして、自分にとって不要なニュースを減らすという意味です。

ニュースを見たあとで「この情報は私にとって意味があったんだろうか」と振り返ることは大事です。

ちなみに私はときどき自分がかつてミュートしていた「キーワード」を見ます。その多くが自分の現在にはほとんど影響がないものばかりです。

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自分の時間を何に使うか。それは非常に重要なことです。ニュースは確かに大切ですが、それで自分の心の健康を害しては意味がありません。十分に注意してくださいね。

ご質問ありがとうございました。

関連する情報をリンクします。

◆ミュートの詳細設定オプションを使用する方法（Twitter公式のヘルプ）
https://help.twitter.com/ja/using-twitter/advanced-twitter-mute-options

◆TwitterのWeb UIで右に表示される「トレンド」欄をCSSを使って消す - 結城浩の連ツイ
https://rentwi.hyuki.net/?1364732286504079362

◆朝食時、ニュース番組を観たくないのだけれど……
https://mm.hyuki.net/n/n05e83e56c25a

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■情報は出すけれど、価値観は押しつけない - 散歩しながら考えたこと
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おはようございます。朝の散歩に出かけました。

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自分の仕事の進め方と内容を自由に選べるのは、フリーランスの良いところでもありますし、大変なところでもあります。

フリーランスと会社勤めでは、苦労する要素が違いますし、またそれぞれにメリットが違います。フリーランスが偉いわけでも会社勤めが偉いわけでもありません。働き方が単に違うだけ、とよく思います。

個人個人の価値観、職業観、労働観、ライフサイクルの違い。それらに応じて、フリーランスと会社勤めに対する向き不向きはあるでしょう。年代もあるかもしれませんね。それから、たまたまそういう働き方になったという場合も多々あるでしょう。出会いと運と巡り合わせです。

働き方の良い点・悪い点を話したり、改善について議論したりするのはいいけれど、特定の働き方を他人に「押し付ける」のはあまり良くないなあと思います。絶対にこちらが良いなんてことはありません。

働き方に限りませんが、一般的情報を得ることと、その情報を各個人にどう適用するかというのは別の話です。たいていは自分自身が体験したことが最も深い印象を与えるものです。ですから、つい、自分にうまくいったことは他人でも絶対にうまくいくと錯覚しがち。でもそんなことはありません。また逆に、自分が失敗したから他人も絶対に失敗するなんてこともいえません。

しかしながら、自分の持つ情報が他人に当てはまらないかもしれないからといって、有用な情報を出さないのもおかしな話です。必要に応じて自分が持っている情報は伝える。しかしその情報をもとにどう判断するかまでは押し付けない。私はそういう態度が大事だと思っています（他人もそう考えなければならないとは思いませんが）。

同様に、他人の情報を受け取るときも、それを自分に適用できるかどうかをきちんと考えてから行動に移した方がいいですよね。

必要に応じて情報は出す。でも自分の価値観を相手に押しつけない。こうやって言葉にしたら当たり前のことですが、変化が激しい現代のような時代では、大切になってくる考え方だと思います。

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この文章は、散歩しながら「結城浩の作業ログ」に音声入力で書いたものをもとにしています。

◆結城浩の作業ログ
https://log.hyuki.net/

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■他人と比較しない生活のために - 人生を歩む
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●質問

結城さんに質問です。

周りと比べず、自分らしい生活を送るために、どんなことを心がけたらよいでしょうか。

友人や同僚と自分を比べて、自己否定的になることが頻繁にあります。仕事の能力や職場環境、生育環境、高い年収など、自分にないものを人が持っていると、とてもうらやましく感じてしまい、同時に自分が劣っているような感情でいっぱいになります。

目の前の課題や、自分がやりたいことを考えるようにしたいのですが、なかなか切り替えられずに困っています。アドバイスいただけると嬉しいです。

●回答

ご質問ありがとうございます。

多くの人があなたと同様に考え、同様に感じ、悩んでいます。ものすごく普遍的な悩みであると思います。

「こうすればいい」と断言することはできませんが、私が思うところを書きます。ただし、これはあくまで私の考え方であってあなたに強制するつもりはありません。

●自分自身の価値をどのように考えるか

私は「自分が何かをする・何かを持っている・何かをできる」ということと、「自分自身の価値」というものを分離して考えるように心がけています。

別の表現をするならば「何か素晴らしい活動をしたとしても自分の価値が上がるわけではないし、どんな失敗をしても自分の価値が下がるわけではない」という意味です。「自分の行動や持ち物と、自分の価値とを分離する」と表現してもかまいません。

私も、他人と自分とを比較してしまうことはどうしてもあります。しかし、その比較はあくまで表面的なものです。その比較によって「自分が持っているもの」や「自分ができること」が劣っているとわかったとしても、「自分自身の価値」が下がったわけではないと考えるようにしています。

そのような考え方は、私がクリスチャンであることと関係があるかもしれませんが、いまはその方向には深入りしません。

●現状をどのようにとらえるか

あなたの質問の中に「自分らしい生活」という表現がありました。言葉狩りをするわけではありませんが、「自分らしい生活」を求めることは、しばしば人を苦しめる場合があります。つまり、自分が思い描いている理想があまりにも高いときに、そのギャップに苦しむ場合があるからです。そこは要注意だと思います。

私が好きなのは、事実に立脚することです。現在の自分が持っているものや、現在の自分ができることを、できるだけ主観的な評価を抜きにして、可能な限り客観的に見て現状をとらえます。その上で、自分はこうなりたい、自分はこうしたいという現実的で具体的な目標を考える。そして、その目標のためにはどのような次の一歩が大事かを考える。

事実を見るならば、自分が持っている物の貧弱さや、能力の低さにがっかりするかもしれません。でも、それが事実ならば、事実と認めた方が楽です。そして事実に立脚したとき、初めて次の一歩が現実的なものになります。現実的な一歩は手応えがあります。その手応えはしばしば痛かったり重かったりしますが、本当の意味で前に進んでいる証拠でもあります。

●うらやましい気持ちにどのように対処するか

他人をうらやましいと思う気持ちはなかなかなくなりません。でも、大事なのは、うらやましい気持ちに自分が振り回されてしまわないことです。うらやましいという気持ちが起きたとしても、自分がきちんと歩めることが大事なのです。

ですから、うらやましいと思う気持ちが生まれたこともまた認めてしまいましょう。「私は〇〇をうらやましいと思っている」という気持ちが生まれたことは事実だからです。事実に立脚するために、うらやましい気持ちもまた、「　　　」に入れた上で存在を認めます。

そして「自分にそんなふうにうらやむ気持ちが生まれたことはわかった。しかし、それはそれとして、私は今日の一歩を進めよう」と考えるのです。

うらやましい気持ちが生まれることと、その気持ちに振り回されることは別です。うらやましい気持ちの存在があったとしても、自分の一歩が向かう方向を自分の意思で決めましょう。

●自分の人生をどのように形作るか

時間は貴重です。過ぎ去った時間は決して戻ってきません。自分の気持ちをやっきになって否定したり、自分の気持ちが存在しないかのように考えるのではなく、自分の気持ちは気持ちとして認めた上で、それはさておき、今日の一歩を進めるのです。

あなたがうらやんでいる当の相手も、ほぼまちがいなく、他の誰かをうらやむことがあるでしょう。ちょうど、あなたと同じように。

人は、自分の人生しか生きられません。しかし人は、自分の人生を生きることができます。自分の人生は、自分に与えられた時間をどのように過ごすかで決まります。人生は毎日の積み重ねでできているのです。

自分が毎日をどう過ごすか。それは、自分の選択に掛かっています。自己否定しながら次の一歩を進めるのはなかなか苦しいものです。（自己否定してしまいがちな気持ちも含め）自分のさまざまな気持ちの存在を認めた上で、それはさておき、自分が進みたい方向に向けて、今日一日分の「次の一歩」を進めましょう。そのような行動を選択しましょう。

自分が今日行う選択の積み重ねが、自分の人生を形作っていくのですから。

私はそんなふうに思います。お互い、ていねいに今日一日分の「次の一歩」を積み重ねていきましょうね。

ご質問ありがとうございました。

関連するかもしれない読み物をリンクします。

◆「次の一歩」を進めよう！
https://mm.hyuki.net/n/nd01012a33c2c

◆クリエイタは「うらみ」と「うらやみ」にエネルギーを奪われるな
https://mm.hyuki.net/n/n333fd40de3e0

◆趣味で書く小説、どうしても他人と比べてしまい書けなくなった（文章を書く心がけ）
https://mm.hyuki.net/n/nde9991962247

◆自分らしく生きなければならないという呪い
https://mm.hyuki.net/n/nbbb52d03a7e2

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■作業ログを継続するコツ - 仕事の心がけ
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●質問

「結城浩の作業ログ」を読んでいます。

作業ログの有用性はよくわかっておりますし、自分でも真似しようとしたのですが、日記を毎日つけるといったことが苦手でうまく続きません。

私の場合は記録の粒度が細かすぎて嫌になることが多いです。うまく記録をつける方法や、結城先生自身で続けるコツがあれば教えてください。

●回答

ご質問ありがとうございます。

ずいぶん以前に知人に「作業ログ」を勧めたことがあります。知人は「すごく良さそうだ！」と張り切ってスタートしたのですが、三日坊主で終わりました。作業ログを書き始めたとたん、書くことを意識するあまりいつもと違う活動に取り組んでしまい、疲れてしまったのだそうです。しかも、自分の作業を数分ごとに必ず記録していたとか。それでは三日坊主になってもしかたがありません。

あなたの「記録の粒度が細かすぎる」という質問を読んで、私はその知人のことを思い出しました。作業ログを書くことを意識し過ぎると、あれもこれも書きたくなってしまいますが、それでは負荷が高すぎて続きません。作業ログを書く作業ばかりになっちゃいますからね。

自分の作業を書くことがなかなかできない場合には「書くことを意識する」練習をする必要がありますが、つい力が入って書きすぎる場合には「書かないことを意識する」練習が必要かもしれません。

ゼロとイチでは大違いです。がんばりすぎて結局作業ログをまったく書かなくなってしまうくらいなら、一日一行だけ書く方が有用です。午前と午後に一行だけ書くのでもいいですね。

●他の人と関わる

作業ログを「読む人」が自分だけだとなかなか続きません。日報のようにして送ると読んでくれる人を見つけられればいいのですが、プライバシーの問題もあって難しいかもしれません。

私のネットの知人で、Slackなどのコミュニケーションツールを使い、日報ならぬ「分報」を書いている人もいます。行っている作業を、さしさわりのない範囲で「○○を作った」「○○ができた」のようにお互いに書いているらしいです。そういう仲間を見つけるのも手です。

また、「書かなければいけないから書く」だと、自分の意志だけが頼りなのでつらくなります。「楽しいから書く」まで行かなくてもいいですが、「あまり深く考えないで書く」くらいのスタンスでもいいと思います。ふだんの作業ではそれほど深く考えずに書く。ふと気付いたことがあったらたまには深く考えて書く。そのくらいのスタンスだと続けやすいです。歯磨きをすることや、靴下を履くことや、トイレに行くくらいの日常感覚で作業ログを書くのです。

●自分の性格を知る

自分の性格をよく理解していると継続しやすいですね。性格というと広くなりすぎますが「自分はこういうことは続けられるが、こういうことだと挫折しやすい」という知識です。あなたのいう「日記を毎日つけるのが苦手」というような知識のことです。

日記をつけるのが苦手としても、毎日やっている作業、毎日の習慣になっていることは何かありますよね。それにつなげて作業ログを（短く）書くという方法はあります。習慣を作る良い方法の一つは、すでに習慣となっている活動に結びつけることですから。

そして、自分の性格を理解するための知識を得ることは、作業ログを書く意味の一つです。自分について知るために書く。

●書き方を柔軟にする

作業ログを書くことがなかなか続かないとしたら「作業ログはこう書かねばならない」みたいな考えから離れて、いろいろやってみるのがいいですよ。「こういう書き方だと、めんどくさいから続かないな」となったら、そこでやめるのではなく、めちゃめちゃ簡単な書き方に変えちゃうのです。

作業ログを書くことの大切な意義の一つは、自分が直面している現実をそのまま知り、改善に生かすことです。

「これじゃ続かない」というのは、作業ログを書いていて自分が受けた実感です。その実感をうまく取り扱うことが大事です。つまりは、それが直面している現実なのですから。

現実をベースにして改善を試みることは大事ですね。作業ログの書き方、それ自体も同じです。

●私の工夫

私が毎日書いている「結城浩の作業ログ」をご購読くださっているのですね。感謝します。あれをご覧になれば、私もそれなりに試行錯誤してるのがわかると思います。

◆結城浩の作業ログ
https://log.hyuki.net

コピペかと思うほど同じことを毎日くりかえし書いているときもあれば、ときどきすごく短いときもあり、ときどきまとまってない訳のわからないことを書いていたり、以前書いた話を蒸し返していたり、文章だけじゃなくて画像を貼ったり……そういった変化はすべて、自分が書きやすいように工夫しているのです。

●改善ループを回す

作業ログはとにかく、どんな形式でもいいので、まずは続けることが大事です。きれいじゃなくていいし、まとまってなくてもかまいません。

「こうやったらどうかな？」という方法を試してみる。うまく行きそうなら続ける。引っかかるようならやめる。柔軟に、こだわらず、自分に合わせて、ちょっとずつ調整していくのです。自分で改善ループを回す感覚です。

自分で改善ループを回すことができると、その工夫自体が楽しさを生むし、自分がやりやすい形になっていくのですごくいいですよ。

作業ログを書く改善ループがうまく回り始めると、自分の他の作業も改善ループに乗ります。自分がやったことを何かしら作業ログに書くことになるので、改善しやすくなるのです。でも、最初から改善ループにこだわらなくてもいいです。盛り上がりすぎたり、期待しすぎたりするとこれまた作業ログが続かなくなる原因にもなりますから。

自分がてくてく歩くときに歩行スタイルの改善なんて意識しませんよね。ただ歩くだけです。でも靴の中に小石が入って気になったら立ち止まって小石を捨てるでしょう。作業ログの改善はそれに近いです。

●作業ログは大きな武器

どんな形式であれ、どんな分量であれ、作業ログを書く習慣を身につけるとすごく強いです。作業ログを通じて、自分の能力・関心・傾向を等身大でつかむことができるからです。「このようにあるべき理想の自分」を考える前に「まずは現実の自分」を実績ベースでつかめます。これが強い。

どんな生活習慣や勉強習慣の本を読んでも「では、私個人に対してはどう適用すればいいのか？そもそも私はふだんどんなふうに過ごしているのか」の答えは書かれていません。

自分に関する能力・関心・傾向の情報を実績ベースでしっかり押さえて進むのと、確実な情報を何も持たずに想像だけで進むのとでは、日々の判断が大きく変わりますよね。

そして、自分に関する情報は、一朝一夕では決して得られませんし、誰かにお金を払っても得られません。自分が時間を掛けて集めていかなくてはなりません。そして作業ログは、そのための大きな、とてつもなく大きな武器になるのです。

日々仕事をしっかりと進めている人の多くは、自分なりの作業ログ（日記、日誌、備忘録、メモ、ジャーナル…）を何かしら持っていると思います。

作業ログは「過去の自分」が「現在の自分」を助けてくれるツールであり、「現在の自分」が「未来の自分」を助けてあげるツールです。ぜひ、（力まずに）身につけてくださいね！

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関連する読み物を以下にリンクします。

◆老いに備える知的生活と作業ログ
https://mm.hyuki.net/n/n759833a7653e

◆あなた自身の航海日誌（なんと1995年の文章です！）
http://www.hyuki.com/dream/log.html

◆自分の活動が実を結んでいないように感じている（仕事の心がけ）｜結城浩
https://mm.hyuki.net/n/n8b6b612ca502

以上です。ご質問ありがとうございました！

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■十年間継続したメルマガは振り返りが持つ深い意味を教えてくれる - 散歩しながら考えたこと
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今回の結城メルマガはVol.520となります。一年は約52週ありますから、ざっくり十年間継続してきたことになりますね。購読してくださるあなたに心から感謝します。

十年間継続してきたメルマガについて思うことはたくさんあります。すべてを書き尽くすことはとうていできませんから、今日は一つだけ「振り返り」のお話をします。

毎週書いている結城メルマガは、自分の活動のいい「振り返り」になっています。メルマガでは、いただいた質問への回答や、つねづね考えていることや、おりおりの仕事のまとめを書いているからです。

たとえば半年前、あるいは一年前のメルマガを読み返すと「ああ、このころにはこういうことをしていたんだな」ということがよくわかります。

ところで「振り返り」は何の役に立つのでしょうか。実際には直接的に役立つことはあまりありません。一年前にはこの本を書いていたんだな（しみじみ）と感慨にふけるくらいが多いです。

でも、直接的に役立つことがないからといって「振り返り」が無意味というわけではありません。それどころか、自分が仕事を進めていく上で深い意味があるのです。

一つの意味は、振り返りを通して「自分は刹那的に生きているのではなく、コンスタントにこつこつ仕事をしているのだな」という自覚が得られること。そのような自覚は、自分の心の安定に大きく役立っています。

その自覚は、自分が二十代の頃に感じていた「自分は毎日いったい何をやっているのだろう」というほのかな無力感とは真逆であると思います。

もう一つの意味は、振り返りを通して「自分は普段どのぐらいの時間でどのぐらいの作業ができるのか」という感覚が得られること。それは、いわば、自分の平熱を知る感覚です。

この感覚は、無謀な計画を立てたり、物事が進まなくてがっかりしたり、そのような危険性を減らす効果があります。直近の勉強に役立ったり次の本の執筆が進んだりとは違う次元の話です。自分の全体像に対する理解といってもいいです。

サンプル号も含めてVol.000からVol.520までの521本。結城浩のメールマガジンを十年間継続してきました。ここには私の十年分の「振り返り」が詰まっているといえます。毎日一通読んでも一年半近く掛かりますね！

あなたの継続的な応援に感謝します。そしてこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

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この文章は、散歩しながら「結城浩の作業ログ」に音声入力で書いたものをもとにしています。

◆結城浩の作業ログ
https://log.hyuki.net/

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■おわりに
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さて、今回の結城メルマガは以上です。

ご感想・ご意見お待ちしています。

また、こちらから匿名で質問を送ることができます。

◆結城浩に聞いてみよう
https://ask.hyuki.net/

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■結城浩の「コミュニケーションの心がけ」
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発行責任者：結城浩（ゆうきひろし）(C) Hiroshi Yuki
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